






女性技術者たちが
成し遂げた、
広島・呉を結ぶ
大動脈の再生
広島市と呉市を結ぶ広島呉道路、通称「クレアライン」。瀬戸内海に架かる全長約16kmのこの道路は、両市を結ぶ重要な幹線道路として40年にわたり地域の暮らしを支えてきた。ただ舗装には、施工当時は一般的に使われていたアスベストが含有していた。老朽化が進む中、安全な撤去と大改修を目指したのが今回のプロジェクトだ。
電磁誘導加熱技術という舗装を温めながら安全に剥がす特殊工法の採用、徹底した飛散防止対策、そして供用中道路での夜間工事―。この重要インフラの未来を切り拓くため、若手からベテランまで世代を超えて挑戦に臨んだ。女性技術者が現場代理人を務め、技術の革新と継承に挑んだ、日本道路の新たな挑戦を追う。
現場概要

- 工事名
- 令和2年度 広島呉道路 舗装補修工事
- 工 期
- 2021年4月~2023年10月
- 発注者
- 西日本高速道路株式会社
- 工事場所
- 広島県広島市~呉市
- 工事概要
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- 舗装補修工 44,255㎡
- 床版防水工 6,566㎡
- トンネル補修工 75㎡
- 料金所地下通路 7基
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C.M.さん現場所長現場所長として工事全体を統括。チームメンバーの経験や立場に応じた育成を行いながら、目的と目標を明確にした現場運営を実施した。特に女性技術者の活躍を支援し、一人ひとりの強みを活かせる環境づくりに注力。
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R.W.さん現場代理人2015年入社。女性技術者として現場代理人を務める。発注者との調整や施工計画の立案を担当。年2回の夜間工事では工程管理と安全管理を徹底した。きめ細やかな視点での現場運営で、地域からの信頼も獲得。
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T.U.さん監理技術者監理技術者として工事の技術面を統括。アスベスト含有舗装の安全管理や鋼床版上での特殊施工を指導した。豊富な経験を活かし、若手育成にも注力。
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T.S.さん工事担当者2020年入社。工事の進捗管理、写真撮影、作業指示書作成を担当。品質管理の重要性を実感しながら、この現場でしか学べない経験を重ねる。
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R.H.さん工事担当者2021年入社。事前調査段階での3ヶ月間、新入社員として現場の準備作業に参加。先輩方の丁寧な指導のもと、建設現場の基礎を学ぶ。
このプロジェクトが生み出したものとは? 未来へ紡ぐ、地域の大動脈の進化

初めて現場代理人を担当し、その責任の重さに不安もありましたが、アスベスト舗装を安全に撤去し、無害な舗装に置き換えるという社会的使命にやりがいを感じました。発注者の方々からも「日本道路は女性技術者が活躍していますね」と関心を持っていただきました。技術者を目指す女性が、不安を払拭できるような、憧れるような存在を目指すきっかけになりました。

国道31号のバイパスとして、この道路は地域になくてはならない存在です。R.W.さんをはじめ、女性技術者たちの細やかな視点が、品質管理の向上につながりました。特に安全面では、C.M.さんも触れていた通り大きな貢献だったと思います。危険を伴う現場で自然と手順書以上の厳格な管理が徹底され、発注者から高い評価をいただくことができました。


細部の品質管理に携わる中で、インフラ整備の重要性を実感しました。一つひとつの作業が、地域の安全につながっているという誇りを持って取り組めました。

アスベストという有害物質を扱う特殊な工事現場で、安全対策の大切さを肌で感じました。入社したばかりの私にとって、防護服を着用しての作業など、すべてが新鮮な経験でしたが、先輩方が一つひとつ丁寧に教えてくださったおかげで、建設工事の基本をしっかりと学ぶことができました。

このプロジェクトで求められたものとは? 女性技術者が挑む、徹底した安全と品質の追求

この現場の現場代理人を任された時は、現場代理人自体が初めてだったこともあり、不安でいっぱいでした。特に今回は、人体に有害なアスベストを含む古い舗装を安全に撤去するという難しい工事。舗装を温めながら慎重に剥がしていく作業では、作業員の安全確保が最優先でした。夜間工事中に舗装の下から予期せぬ損傷が見つかることもあり、その都度、発注者の方々と相談しながら最適な対処方法を検討しました。不安は大きかったものの、「女性だからこそできることがある」と背中を押してくださった先輩方のおかげで、安全を徹底した自分らしい現場運営ができました。

R.W.さんの気配りは、現場の雰囲気も大きく変えました。作業員の体調管理はもちろん、海の上の橋梁という特殊な環境での安全対策も徹底。強風で作業が危険になりそうな時は、すぐに作業を中止するなど、男性だけなら敢行してしまいそうな場面で冷静な判断ができたと感じています。特に夜間工事では、限られた時間の中で安全と品質を両立させる難しさがありましたが、全員で知恵を出し合いながら乗り越えることができました。


私は工事担当者として、現場の記録と品質管理を担当しました。一見すると地味な作業ですが、工事の品質を証明する重要な記録です。特に夜間は暗い中での写真撮影となるため、どの角度から撮れば損傷の状態が分かりやすく記録できるか、日々工夫を重ねました。「後から見返しても状況が一目で分かる記録を」「これは次世代につなぐ資料」という意識で、細部まで丁寧に記録することを心がけました。

私は当時新入社員で、最初は戸惑うことばかりでした。特に防護服を着用しての作業は動きづらくて大変でしたが、R.W.さんやT.S.さんの姿に、建設業での女性の可能性を感じました。工事の進め方や安全管理の基本を、先輩方が一から丁寧に教えてくださったおかげで、建設現場の醍醐味を学べました。

女性技術者が増えたことで、現場のコミュニケーションが活性化し、安全性も向上しました。特にR.W.さんは、発注者や協力業者との関係づくりでも高い評価を得ています。今や性別は関係なく、一人ひとりの能力と意欲が評価される。そんな建設現場の未来像を、このプロジェクトは示してくれたと思います。

プロジェクトが切り拓く未来とは? 多様性が力となる、建設現場の新たな形

このプロジェクトで最も印象的だったのは、社員一人ひとりの成長です。特に若手の向上心には目を見張るものがありました。R.W.さんとT.S.さんは、仕事の全体を見渡して段取りを考える重要性に気づいたことと最後までやり切る姿勢で、日々着実に力をつけていきました。多様化していく建設業界では、多角的な視点を持つ人財の活躍がますます重要になります。

現場代理人として、初めて大規模工事を任されました。技術面はもちろん、コミュニケーションの重要性を深く学べるチャンスでした。発注者との打ち合わせや作業員との調整を通じて、全体を見渡す視点を得られ、より良い判断ができるようになったと考えています。この経験を活かして、さらに大きなプロジェクトにも挑戦していきたいです。

工事担当者としての自覚が芽生えました。現場写真の撮影一つとっても、将来の維持管理に活きる重要な記録となります。品質管理の重要性を深く理解できた仕事でした。今後は若手技術者として、さらに専門性を高めながら、現場全体を見渡せる技術者を目指していきたいと思います。

特殊工事の技術指導を担当したことで、経験を次世代に伝える難しさと重要性を実感しました。R.W.さんやT.S.さんとの日々のコミュニケーションを通じて、私自身も新しい視点や考え方に気づくことができました。今後はこの経験を活かし、後進の育成にも力を入れていきたいと考えています。


珍しい現場に参加でき、自然と学ぶ姿勢が身につきました。マニュアルに載っていないことの連続で、自分で調べても分からない…。先輩を質問攻めにしてしまう毎日でした。アスベスト対策など特殊条件下での安全管理の基礎を学び、現場作業の実態を理解できたことを幸運だったと思っています。

この現場では、性別や経験年数に関係なく、一人ひとりが持つ強みを活かせる環境づくりを心がけました。その結果、発注者からの高い評価につながりました。変化の大きな建設業界全体では、こうした多様性を活かした現場づくりの重要性は増していきます。このプロジェクトで得た経験を、今後の現場運営にも積極的に活かしていきたいと思います。

このプロジェクトでは、通常の道路改修とは異なる二つの重要な使命に挑戦しました。アスベストを含有する舗装の適切な撤去による健康被害の防止と、重要インフラの安全性確保です。女性技術者が現場代理人を務めることで、男性では気づきにくい危険の回避、地域への丁寧な配慮を実現できました。これは、多様な視点を持つ技術者が活躍できる現場づくりの好事例になったと考えています。